■ ご相談の経緯
大阪市在住のK様より、借地権解除のご相談を頂きました。
ご相談内容は、次の通りでした。
K様のお父様の時代から貸している土地があり、その当時の借地人(2人)が
その借地に各々建物を建築しました。その後(40年程前)、その借地権付建物
2棟を現在の借地人のお父様が購入により取得し、現在の借地人が10年程前に
相続により取得、その際に借地権更新契約書を締結しました。
その後、現在の借地人は、その借地権付建物を第三者に貸して、
家賃収入を受け取っていました。
平成24年5月現在、その借地権付建物の内1棟は未入居、もう1棟は
入居中(入居期間:約10年位)で、毎月家賃収入4万円を受け取っているが、
借地人による地代不払いの状態が約2年続いています。
■ 借地権(旧法)のについて
借地法(旧法)は、大正10年(1921年)に制定されました。
その後、下記の表のように社会背景による必要性から改正が行われて
きましたが、昭和41年(土地に比べ相対的に建物の価格が高額だった
時代)の改正後から、平成4年に借地借家法(新法)が施行され、
旧法が廃止されるまでの約30年間も放置されたままになった法律です。
しかも平成4年に施行された新法と旧法では、仕組みが異なる為、
新法施行前から存在する借地・借家関係については、新法は遡及して
適用されず、依然として旧法が適用されています。
年代 |
改正内容と社会拝啓 |
大正10年 借地法 制定 |
借地権の法定存続期間を定め、譲渡・転貸につき承諾が 得られない場合、「建物買取請求権」を認めた。 「更新請求」、「法定更新制度」も認められるようになった。 |
昭和16年 借地法 改正 |
満州事変、日中戦争により、軍需景気が勃興し、都市へ 勤労者の流入が激しくなり、土地の不足により住居の 確保が必要になってきた為、「更新拒絶をするためには、 正当事由が必要」と定めれらた。 裁判では、改正直後は地主の正当事由を認めていたが、 その後昭和20年の敗戦時には建物の消失が激しく 余程の事がないと、地主の正当事由が認められなくなり、 借地権の永続性が強くなった。 |
昭和41年 借地法 改正 |
「増改築、建替え、譲渡・転貸、競売」について、 地主に代わる裁判所の許可制度を導入した。 |
平成4年 借地借家法 施行 |
「定期借地権制度」を導入し、「建物の朽廃による 借地権の消滅」を削除した。 |
■ 借地権の種類と期間
借地権については、依然として旧法が適用されている為、
平成4年8月より施行された借地借家法と合わせて、
その契約締結時期や条件により5種類に分かれます。
ここでいう時期とは、建物の「建替え」や「契約更新」、「相続」などが
あった場合でも、当初その土地を借り始めた時期の事を言います。
借地権の種類 |
設定当初 存続期間 |
更新後の存続期間 |
||||
一回目 の更新 |
二回目以 降の更新 |
|||||
借 |
旧法上の 借地権 |
堅固建物 |
期間の 定め有 |
30年以上 |
30年以上 |
|
期間の 定め無 |
60年 |
30年 |
||||
非堅固建物 |
期間の 定め有 |
20年以上 |
20年以上 |
|||
期間の 定め無 |
30年 |
20年 |
||||
借 |
普通借地権 |
期間の 定め有 |
30年以上 |
20年以上 |
10年以上 |
|
期間の 定め無 |
30年 |
20年 |
10年 |
|||
定期借地権 |
一般定期借地権 |
50年以上 |
更新なし。 期間満了後は建物を 解体し、土地を明渡す。 |
|||
建物譲渡特約付借地権 |
30年以上 |
建物譲渡により 借地権は消滅。 |
||||
事業用借地権 |
10年以上 50年未満 |
更新なし。 期間満了後は建物を 解体し、土地を明渡す。 |
■ 旧借地権の売却について
旧借地権の売買については、下記の問題点があります。
1.借地権の売却価格は、財産評価基準書の借地割合より低額。
よくコーヒーカップとソーサーに例えられますが、いくら高額なコーヒー
カップでもソーサーだけをその割合に応じた金額で購入しませんよね。
借地権も同様で、仮に借地権割合50%の地域にある評価額1億円の
土地の借地権の売却価格は5,000万円とはなりません。
その時の譲渡人や譲受人の状況に応じて、非常に流動的なものとなります。
2.金融機関での融資が不可。
上記1.のように、担保価値も流動的で処分し難いので、
融資をしない金融機関が殆どです。
3.全ての行為に承諾料が必要。
借地権については、全ての行為(借地権の更新、譲渡や建物の建替え等)
には、土地所有者の承諾(承諾料)が必要となります。
その承諾料については、地域により大きく異なります。(下記は目安です。)
(a) |
借地権の更新 |
借地権価格の5% - 10% |
(b) |
借地権の譲渡 |
借地権価格の約10%程度 |
(C) |
建物増改築の承諾料 |
更地価格の3% - 5%程度 |
(d) |
借地条件の変更 |
更地価格の10%程度 |
その他にも、取引慣行の有無、第3者対抗力の有無、将来の地代や
土地所有者の相続に対する不安等々の問題点が有ります。
■ 地代不払いを理由とする借地権の解除
今回ご相談頂いたK様の場合は、地代不払いを理由とする借地権の
解除することが出来ますが、下記ような手続きが必要で膨大な費用と
時間が掛かります。
■ 解決まで
土地所有者K様と借地人との話し合いにより、借地人にて
現在の入居者(建物賃借人)の退去手続きをして頂きました。
(実際の手続きについては、弊社でサポートしております。)
又借地権の譲渡価格として、土地所有者K様より借地人に150万円を
支払うこととし、その価格より地代未払い金を差し引くこととしました。
取壊し費用(約250万円程度)は、土地所有者K様にてご負担して
頂くこととしました。
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